研究内容
1.花粉管の転写に依存しない遺伝子発現の解析
被子植物の花粉管は、植物の繁殖に必須の細胞です。花粉管は雌しべ中を伸長し続け、最終的に雌組織である胚珠の元に辿り着きます。この花粉管の伸長制御は、花粉管先端に存在する核の転写が重要であると考えられてきました。しかし我々の研究から、先端に核を持たない花粉管も長時間に渡り伸長できることが明らかとなりました。このことは、花粉管は転写に依存せず、“RNAを効率よく利用して細胞機能を維持するシステム”が存在することを示唆しています。そこで我々は高精細な花粉管イメージング技術を用いて、この花粉管の秀でた遺伝子発現制御能力を明らかにすることを試みています。そして得られた花粉管細胞内部のRNA動態の知見から、花粉管の類まれな先端成長能力の秘密を分子レベルで解明するとともに、両性花の生殖戦略におけるRNA研究の基盤技術を確立することを目指しています。
2.花粉管中の精細胞輸送の解析
花粉管は、別の細胞である“精細胞”を内部に保有するという、非常に特殊な構造をしています。この構造こそが、過酷な環境においても安定的に精細胞を胚珠へ届けることを実現し、植物に繁栄をもたらしています。最近まで、精細胞は先行する栄養核にけん引される積み荷であると考えられてきましたが、我々の研究から、精細胞は独自に位置が制御、輸送されていることが明らかになってきました。我々はライブイメージングや生化学を駆使した様々な解析を通じて、この分子機構を明らかにしようとしています。
3.ゲノム編集を基盤とした生殖細胞形成過程の解明
ゲノム編集技術CRISPRにより、これまで不可能であった研究が可能になってきています。私たちはゲノム編集ツールそのものに加え、それを植物へ導入する技術など様々な技術開発を進めており、それを利用して生殖細胞形成過程の解明を進めています。(加筆予定)
4.ゲノム編集を利用した細胞間RNA移行機構の解明
花粉を構成する精細胞と栄養細胞の間では物質が移動することが示唆されており、中でもRNAが栄養細胞から精細胞へ移動することで、様々な生殖現象を制御することが示唆されています。そこで我々はこの移動を検出する実験系とゲノム編集技術を組み合わせることで、このRNAの細胞間移動を制御する分子の同定を試みています。(加筆予定)